神成大樹「壁を突破することができるコミュニティ」~デジタルハリウッドは港である~

今回の修了生インタビューでは2015年度修了生の神成大樹さんにお話を伺いました。
神成さんは在学中に着想を得て会社を立ち上げ、クリエイターの作業効率化や負担の軽減ができる左手デバイス「Orbital2(オービタル2)」を開発されました。

―現在の仕事、活動について教えてください

今はクリエイターのためのクリエイターによるハードウェアベンチャー「BRAIN MAGIC Inc.(以下、BRAIN MAGIC)」を経営しております。
事業内容の一例として、映像クリエイターさんやイラストレーターさんなどの仕事をより早く、より楽にするための通称「左手デバイス」と呼ばれるジャンルの製品を販売しています。元々私自身が映像クリエイターでありイラストレーターでした。それが基となってマーケットよりはプロダクトアウト思考的なところで、クリエイターのあらゆる数値を取って科学的に分析し、言語化されていないようなニーズに対応していこうという取り組みをしています。

―デジタル技術を学ぶキッカケは何でしたか?

中学の頃にゲームなどに触れていく中で、自分もイラストに関わる仕事をしてみたいと思い、3DCGを独学で学び始めました。
高校時代は建築系に進むことも考えていましたが、初めてソーシャルゲーム系のイラストの仕事を頂いたことで、自分は将来こっちのほうでやっていこうと気持ちが固まりました。

―デジタルハリウッド大学大学院に入られた経緯は?

「デジハリ」という存在は3DCGを学ぶときに色々調べていたこともあって、専門スクールのほうのデジタルハリウッドのことを早くから知っていました。
たった数ヶ月の講義を受けた人がすごい作品を次々に出しているのを見て驚いたことを覚えています。
進路を考える際には大学へ行かずに、専門スクールのデジタルハリウッドへ進むことも検討していました。

でも大学は学部がたくさんあるデジタルハリウッドではない総合的な学校に入学し、技術系の学部でCGを専攻しました。そのタイミングでソーシャルゲームバブルが訪れたことで、まだCGができる人があまり多くなかったこともあって、在学中に様々な仕事を任せてもらいました。
総合的な学校なので、その中から技術系のプロになる人は学年の中で1?2割という印象です。
ところが在学中に知り合った仲間たちが偶然にもプロを目指している人ばかりで、化学反応のようにお互いを高め合い、卒業後は皆揃って各方面のプロになりました。今振り返っても異常な巡り合わせだったと思います。
その仲間たちと「大学を卒業して3年後を目処にまた集まって起業しよう」と約束を交わしていました。

大学卒業から半年後、仲間の1人が勤めていた会社が倒産してしまいました。そのときに担当していたクライアント様からは引き続き仕事をお願いしたいとのことでしたので、それらを引き受ける形で一緒にやってくれる仲間を集めて起業しました。
しかし性急に起業したことで帳簿はなんとか付けることができたものの、クリエイターばかりが集まったため社内に数字のことが分かっている人間がいませんでした。
経営を続ける上でこれでは良くないので勉強しなければと考え、そこでデジタルハリウッド大学大学院が候補に浮かびました。
大学(学部)のほうは技術そのものを専門的に教えるのに対して、デジタルハリウッド大学大学院はクリエイター、クリエイティブの文脈はありながらも、実際の経営に対しても強いという記事を見かけたことがキッカケです。
そこから問い合わせをして、魅力的な授業のラインナップに惹かれて出願し、入学に至りました。

―実際に本学で学んでみた感想を教えてください。

単刀直入に言うと大学院に戻りたいです。卒業しなければよかったと思うくらいです。
今まで自分が受けてきた座学の授業というものは、学問的に作られた授業が多かったのですが、デジタルハリウッド大学大学院では会計士、弁護士、会社の代表者、マーケティングなど様々な実務に携わる教員方が、実際の現場での経験などを交えながら、生きたものを教えて下さいます。
現役で活躍されている教員が多いので、情報の鮮度も非常に高く、自分の仕事に活かそうと思ったときにそのまま使えるということも多々ありました。
勉強して何かに使おうというよりは、自分が今まさに会社で困っていることがそのまま授業になっていることが多かったです。

入学当初、デジタルハリウッド大学大学院の学生はクリエイターが多いという印象でした。実際に一部はそうでしたが、様々な業種の第一線で活躍されている方も多くいらっしゃいました。
そこで仕事が生まれていることもありましたし、お互いに刺激しあうことで高められたところもありました。
入学して間もない頃にビジネスミーティングをさせていただいた方は、アイディアを実現してゆくスピードや発信力が桁違いに高く、入学時に受けた洗礼として強く印象に残っています。
他にも自分の持っていないものを持つ人が複数いて、学生間の人脈も魅力の一つです。

―印象に残っている授業はありますか?

クリエイターとして働いてゆく上で必要になることは、クリエイティブなこと以外にも沢山あります。
「デジハリ」という学校に入ってくる方々に絶対にお勧めしたいのはセルフプロデュースの力です。例えばプロデュース系の授業やマーケティングです。
会社との契約など法律に関係する授業としては「リーガルマネジメント」もあります。
これは業界が抱える根深い問題として捉えているのですが、誰かが始めるのを待つだけのクリエイターが多いと考えています。
周りが始めてくれるのを待つだけではなく、クリエイター自身で行動を起こす力を養えるというところでプロトタイピング系の授業もお勧めです。

―「BRAIN MAGIC」の経営者として、本学での経験が活かされていると感じるところはありますか?

企業家としてのメンタルはデジタルハリウッド大学大学院で培ったものと言えます。
例えばプレゼンの準備に関して、皆が背中を押してくれるというよりは「もう疲れたけどあの人ならこの瞬間からさらにやるんだよな。ここで止めたら差がつくからサボれないな。」というのがあります。
向き合いたくないものと向き合う姿勢も、授業を通して同期生からも学びました。

―入学を検討されている方へメッセージをお願いします。

この学校には様々な業界の最先端が集まっています。
授業で得られる鮮度の高い情報だけでなく、学校で生まれた人脈が助けになるということもあります。
ここには専門家が集まっているので、普通であれば無理だと諦めてしまうようなことでも、無理を無理ではなくする力がこの場にはあると考えています。
私の経験として「Orbital2」を開発する際に、金型製造のことなどで壁に当たってしまっていたとき、周りに相談したところ「こうしたらいいんじゃない?」と気軽に提案されて、やってみたらできましたということもありました。
壁を突破することができるコミュニティを築けるというのがデジタルハリウッド大学大学院の強みだと思います。
あるときデジタルハリウッドスタッフの池谷和浩さんが「デジタルハリウッドは港である」と話されていたことに共感を覚えました。
世界に向けて出港し、冒険を終えたらまた港へ戻ってくる。目標に向かって同じ船に乗ってくれる同志もいれば、港へ戻ったときに冒険の話を共有できる仲間もいる。
こうして冒険の話をしにきた私もまさにそうなのだと感じています。

まだ目指すものがない方にも良いですし、あるいはやりたいことがあってもどうやって実現したら良いか分からない方にも合っているかと思います。
学校に来て単純に何かを学ぶというのも良いですが、「デジハリをうまく使う」というのも大事なことです。

―ありがとうございました。

株式会社BRAIN MAGIC 代表取締役CEO
神成大樹(デジタルハリウッド大学大学院修了)

1989年3月11日生まれ。デジタルコンテンツマネジメント修士。
学生時代よりイラストレーター、デザイナーとしての活動を開始。2012年ソーシャルゲームのイラスト、UI等周辺デザインを主な事業内容とする株式会社B.C.Membersの創業に参加。取締役に就任。その後ソーシャルゲームブームの波に乗りイラストレーター、アートディレクターとして職務に従事する傍ら、社会人大学院生としてデジタルハリウッド大学大学院に通い始める。これをきっかけに、予てより構想のみ存在したクリエイター特化型の入力機器の研究開発をスタート、2016年に同研究とビジネスモデルを持って株式会社BRAIN MAGICを創設。現在同製品を中心にさまざまなクリエイター向けソリューションを開発中。