本多忠房『「受け手の工夫」で、より滑らかな世界を』

対面でのミーティングが日常で、「これからテレカン」なんて言うとちょっと嫌味な響きすらあった昨今。利便性やエンターテインメント性(Snap Cameraのフィルタは楽しいです)をテコに、徐々に浸透すると予想していたものが、あっという間にひっくり返りました。Outlookの「Teams会議」のボタンなんて誰が押すんだ?と思っていた頃のわたし、何もわかっていませんでした。

リアルがレアで、デジタルが日常になる。仮にそれが「ニュー・ノーマル」だとすると、コミュニケーションのあり方も根本的に考え直さないといけなさそうです。人間がすることだから本質的な部分は変わらないだろうという見立てもあり得ますが、この変化は人類史における久々のビッグウェーブだと思います。なので、せっかくだからUpdateしましょう。

そこで、現在のようなシチュエーションになる少し前から考え始めていて、これからしばらくかけて研究したいことがあります。それはコミュニケーションの「受け手の工夫」について。現在世の中に存在する、コミュニケーションについて考え、語る人や書籍はたいてい「出し手の工夫」にフォーカスが当てられています。話し方とか、身振り手振りとか、そういうものです。ただ、「受け手」が工夫することで、コミュニケーションはもうちょっとマシになるんじゃないかと思っています。

例えば。あなたが渋谷の109の前を歩いているときに、「ナンパされたくないです」「っていうか話しかけてこないで」という意思を肉食系男子に(声に出したりせずに)明確に伝えられたとすると、不快指数は下がりそうじゃないですか? あるいは、観光地で一見困っているように見える外国人観光客が本当に困っていると明示的に表現されていれば、“Can I help you?”と声をかけるハードルは下がりそうです。これらはオンラインツールの「ステータス」が現実世界に実装されれば実現できそうですよね。

テクノロジーはコミュ強がより強くなるためではなく、コミュ障が少しでも生きやすくなるために使われるべきだと信じています。テクノロジーとアイデアで、すべての人がより暮らしやすい、とげとげしくない滑らかな世界を。これからもがんばります。

本多忠房
上智大学在学中にデザイナーとして活動開始。その後ヤフー、サイバーエージェント、日本コカ・コーラ、電通/dentsumcgarrybowenのExecutive Creative Directorを経て2021年からTaDah LLCのプランナー / エディター / 代表社員。2015年よりデジタルハリウッド大学大学院専任教授に。担当科目: コミュニケーションデザインラボ