山崎大助「AI時代の技術革新：プログラマーは今後「高度なスキル」が求められる」

過去に何度となくAIブームの波は訪れましたが、2022年末にOpenAI社が発表したChatGPTをきっかけに、いま私たちは、ようやく「本物のAI」と直面する時代へと突入しました。指示出しさえすれば、適切なプログラミングを自動生成してくれる。そんなサービスの登場に、「いずれプログラマーなんて必要なくなるんじゃない」という噂も囁かれています。果たして本当にそんな時代がやって来るのでしょうか?

その答えはイエスでもあり、ノーでもあります。近年のAIの品質は著しく向上し、誰しもが自由にアクセスできる環境も整っているため、AIがこれからのメインテクノロジーになっていくのは間違いないでしょう。基本的なプログラミングならば、新人プログラマーよりもChatGPTの方がたしかに優秀な仕事をしてくれるのですから。

しかし、ChatGPTはあくまでも人が指示を出すことによって機能する「道具」。使いこなせる人には強力な武器になるかわりに、正しく使えない人はすぐに限界を感じ、無用の長物となる可能性もあるでしょう。新しい道具を有効に使うために大切なのは、意識的に物事を見つめ、好奇心をもってその先にあるものを掴み取りたいと思う気持ち。辞書で単語を引き、意味を理解し、次々に正しい言葉や美しい文章を紡ぎ出すように、ChatGPTを駆使して分からないプログラミングのコードを調べ、使いこなし、新しい方法論を構築していく。長い目でみれば、まったく専門知識がない人でも、プロの力を借りずにデジタルビジネスを展開していくチャンスがあるのです。

一方で、これからのプログラマーに必要なスキルとは、ChatGPTを併用するなかでより正しい判断、選択を取り、さらに的確な指示を出す力。つまりは、より高度なプログラミング知識と豊かな経験を持つプログラマーのニーズが、これまで以上に高まるとも考えられます。

誰しもが使えるコンピュータやアプリケーションがつくりたい。何度も失敗を繰り返しながらも初心を貫き、最終的に世界での成功を勝ち取ったアップルやマイクロソフトの創業者のように、いまはぼんやりとしか見えていない遠くの景色に、少しでも近づきたいと思う冒険心。そんな素直な気持ちが、次なる時代を揺り動かすエネルギーとなるのでしょう。