藤吉香帆「何をやっても良い場所」~密度の濃い青春を世代を超えて~

今回の修了生インタビューでは2021年度修了生の藤吉香帆さんにお話を伺いました。藤吉さんはデジタルハリウッド大学(学部)在学時よりインターネット広告代理店にて動画制作チームの立ち上げに従事し、大学卒業後は起業してイベントや広告のディレクター、プランナーなどで活動されています。社会人となった2年後に仕事を続けながらデジタルハリウッド大学大学院へ進学する形で戻って来られました。

―現在の仕事、活動について教えてください。

今はセツナクリエイション合同会社(以下、セツナクリエイション)という会社を立ち上げ、クリエイティブの制作とYouTuberのプロデュースをやっています。これからインフルエンサーになりたい人や、自社内で動画を作れるようになりたいという企業さん向けに、技術指導や動画制作の取り組み方についての研修も行っています。2022年度からデジタルハリウッド大学の非常勤講師として、映像制作の講義も担当しています。

―起業した経緯を教えてください。

広告代理店を退職したあと1年間フリーランスをしている中で、大学の同期であった花束さんと仕事をする機会が増えました。
彼女がYouTuberのプロデュースをやっていきたいという希望があり、法人のほうが動きやすいのではないかという話になりました。私は動画制作ができていればそれでよかったので、それならばいっそのこと2人で起業するかという話になり、「それならば作っちゃえ!いけー!」という感じで、そこから2週間くらいでセツナクリエイションを立ち上げました。立ち上げにあたって周りにいる会社を作った経験のある方々に相談すると、その場のノリで立ち上げたという方が多かったです。私たちの世代がそうなのかもしれません。また大学院では会社を持っている方や起業経験者も多く、あまり会社を作るということ自体に物珍しさは感じていませんでした。

―藤吉さんはデジタルハリウッド大学に入学されましたが、何を理由に選ばれたのでしょうか?

周りに通っている人がいたとかではなく、ベネッセの適学診断を受けて結果の一つとして出てきたことで知りました。他の大学のオープンキャンパスも行きましたがどうもしっくり来ず、「大学生になる意味があるのかな?」なんてことを思っていました。そこでデジハリのオープンキャンパスに来てみたところ、体験授業を担当されていた先輩たちの自己紹介がとても格好良くて「他の学校の先輩たちとレベルが違う!」と感動しました。

自分の将来を重ねてみて、「ああいう大人になっていけるのであればこの学校に入るのもアリかもしれない!面白そうだなぁ、いいなぁ。」と思いながら家に帰り、たまたまそのとき観ていた宇宙兄弟のシャロン博士も「楽しいことをやったほうがいい」と言っていたので背中を押されました。留学生制度があったのも決め手の一つです。

―大学から大学院へ進もうと思われた理由は何ですか?

大学在学中にフリーランスで映像の仕事をしていたので、自分なりに仕事については考えていました。映像クリエイターという仕事は当時はまだ珍しい存在でした。いわゆるYouTuberと呼ばれるような人も大学1年の頃はHIKAKINさんくらいで、大学2年の頃に水溜りボンドさんが出始めたような時期でした。

動画という分野は転換期を迎えていたので、自分の未来の見通しを立てることが難しく、進路としてどうだろうかと悩んだこともありました。大学時代に広告動画に触れ、動画だけでなく広告分野全体に興味を持ち、新卒のタイミングでは広告会社への就職をしました。会社員として仕事をしていると大学時代の学びが活用できる部分が多かったです。それと同時に学びの機会が減っているとも感じ、もっと勉強したいと考えるようになりました。転職を機にプロモーションプランナーという仕事から映像クリエイターへ戻り、フリーランスとして活動してゆくのであれば経営視点を持つことが重要だと考えました。大学院は大学と違って技術を教えるよりも、経営についてなど自分で仕事をしてゆく人に向けた授業が多いことは以前から聞いていました。独立するのであれば経営に関する知識がさらに重要になると考えて大学院進学を決めました。

自分の性格として同じことをしていると飽きてしまうので、飽きたら別の場所へ行けばいいというふうに考えています。それこそ会社員という生活に対してマンネリ化を感じたときに、会社員を辞めて大学院に入れば何かが変わるのではないかと思いました。自分の力だけで行動を変えることはなかなか難しいですが、学校や仕事を通して外から締切を作ってもらい、色々なシーンで適度に圧力をかけてもらい、乗り換えた時に成長を感じられました。

―印象に残っている授業はありますか?

藤井先生の「先端科学原論」はすごかったです。「こんなことも考えてないの?これくらいは考えようよ。」みたいな問題提起が衝撃的でした。

科学を中心として哲学からアートまで幅広い話を全て教えられるくらい藤井先生は知識を持っておられて、授業内でのディスカッションでは自分の考えを述べるためにたくさん思考しないといけなかったですし学生同士や藤井先生からも意見が返ってきて、授業としての情報量の多さ、そして考える量もすごくて良いスタートダッシュになりました。
大学時代は何かを作ることが先行して教養系の授業はあまり取りませんでしたが、自分で色々考えるためには教養が大事だと痛感しました。
また、その次のクォーターでは草原先生の「先端芸術原論」でアート視点の世の中の見方を学ぶことができ、学びの意欲が上がりました。

―大学院には幅広い年齢層の方がいますが、やりづらさなどを感じたことはありましたか?

全然ありませんでした。敬語は比較的苦手でしたがフランクな話し方をしていて、皆さんも「同期だし」という視点をお持ちで円滑なコミュニケーションが取れていました。何よりも自分ができるからと他人を見下すような人が1人もいませんでしたし、「自分はこれができて、あの人はあれができて、あの人こんなことできてすごい!」と日々言い合えるような関係性でした。

広告代理店にいた頃は新人だからと全然話を聞いてもらえないということも経験しました。大学院の同期には学部を卒業してそのまま進学してきた私より年下の人もいましたが、誰でも年齢に関係なく自分の思ったことを口に出して意見交換ができ、社会の先輩たちと話ができる空間がとても有り難かったです。卒業後も同期の人たちとは頻繁に連絡を取り合っています。何かの記事になったという話もあれば、ちょっとした雑談などもしています。

―大学院を経て何か変わったことはありますか?

社会人をする度胸が付きました(笑)

会社員の2年間は新卒で入っていることもあってフワフワしている部分がありました。10年後のことを考えろと言われても取っ掛かりがありませんでした。大学院でビジネスについて学んだことで、今は種まきをしていて来年以降の収益に繋がれば良いという思考もできるようになって、ビジネスは長期戦なのだということに理解が及びました。投資していつか回収できればビジネスとしてokなので、今は会社として何に投資してゆくべきかということを考えています。融資や助成金の申請についても、授業で習ったことを生かして書類をすぐに作成できるようになりました。

―セツナクリエイションやご自身の今後について教えてください。

LINEスタンプや通販サイトで売る商品など自社コンテンツを充実させたいです。セツナクリエイションの「刹那」という言葉は、長く時間をかけた良質なものというよりは、シンプルで最低限のものをパッと出すことを意識してやっています。

「今必要なものをすぐ作る」「今のこの一瞬を大事にする」ということが自分たちに合っているからです。

私自身のことでいうとダンスの映像制作を極めていきたいと考えています。ミュージックビデオを撮っていてダンスも撮っているという人はたくさんいますが、ダンスを専門的に撮られている方は少ないです。尊敬しているダンス映像作家さんが2人いまして、世代的には少し上の方々ですが、そこに追いつけるように頑張りたいです。

―入学を検討されている方へメッセージをお願いします。

この学校は公園や広場のようなものだと思っています。何をやっても良い場所です。先輩も同期も後輩も、このままではいけないという危機感を持って入ってきている人が多いと思います。漠然と行き詰まったときに入ったという方の話も聞きました。

私はダンスと関わってゆく中で何をすればいいのか分からないけどとりあえず入ってみたという感じです。元々は職業ダンサーが日本で増える活動をしたいと考えていましたが、職業として増えるためにはダンスが好きな人が増えないといけないと思いました。観てすごいと思うことはあっても、観に行きたいと思うところまでいかないことが多いので、楽しくやっている人が知り合いにいれば観に行くかもしれないというところから裾野を広げたいと考えています。遠回りで時間はかかるかもしれませんが、考えるための多くの時間が取れて、考えている間の壁打ち相手は大学院に先生方や学生が山ほどいるので、大変そうだなとか考える前にとりあえず飛び込んでみればいいと思います。

大学院では同期の人たちと一緒に部活で全国大会に出るレベルの取り組みを1クオーター毎にやっていたという感じでした。それぐらい密度の濃い青春を色々な世代の人とできたという経験は貴重で、とても楽しかったです。

―ありがとうございました。

セツナクリエイション合同会社 代表取締役
藤吉香帆(デジタルハリウッド大学大学院修了)

1994年4月26日生まれ。デジタルコンテンツマネジメント修士。
デジタルハリウッド大学在学時よりインターネット広告代理店にてインフィード広告のクリエイティブ業務における動画制作チームの立ち上げに従事。卒業後は広告代理店にてプロモーション領域のプランニングを担当。イベント・展示会・キャンペーン・店頭設計やそれにまつわる各種クリエイティブ制作のディレクションを経験し退職し独立。1年間のフリーランスを経てセツナクリエイション合同会社を設立。現在は、イベント・広告を中心にディレクター・プランナーとして活動。動画制作のみならず、社内動画チーム立ち上げ協力やクリエイター育成業務も行なっている。
デジタルフロンティア2017 グランプリ&ベストPV賞
学生CGコンテスト2017 ノミネート
門真国際映画祭 2018 ダンス映像部門入選
デジタルフロンティア2022 ベストサービス賞