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東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会より講師派遣

「コンテンツ振興政策概論」の第2回講義に、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が行う大学連携事業として、同委員会 大会準備運営第一局パラリンピック統括部長の中南久志氏をお招きし、東京2020大会に向けて組織委員会が現在実行していることや、今後予定していることなどをお話しいただきました。

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公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
大会準備運営第一局パラリンピック統括部長 中南久志氏

 

はじめに、東京2020大会の予想規模のお話がありました。オリンピックへ参加する選手の数が約1万5百人、そこに関係者・役員を含めると約1万7千人の規模となります。パラリンピックに参加する選手は約4500人、役員含めると約7000~7500人を想定しているそうです。組織委員会は、晴海地区の選手村(宿泊施設)のことや、大会開催中に必要とする食料確保や保存場所の計画もしなくてはなりません。また、ロンドン2012大会のデータを元にすると競技大会の観戦用チケットは1千万枚を超えるのではないかと予想され、大量のチケット発券に対応しうるシステムの導入を検討しなくてはならないとのことです。

 

進む、東京2020大会と大学の連携

競技大会の開催中は、大規模に全国で盛り上がっていきたい、通訳や案内などのボランティア活動ができる学生に集結してもらいたい、ということから、現在、組織委員会では全国786校の大学と連携しています。ボランティア(会場内の誘導、専用車両の運転、メディアセンターや選手村支援等)は約8万人必要で、組織委員会で管理をしてゆきます。また、東京都が別途1万人のボランティア(主に会場外での案内)を募集する予定で、海外からのボランティアも募集予定ですが、2020年に日本に滞在している留学生が候補になる可能性もあります。

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パラリンピック、アクセシビリティへの取り組み

中南氏は、主にパラリンピックにおけるアクセシビリティを担当されており、大会準備におけるバリアフリー対策のながれを詳細にご説明いただきました。

バリアフリーには、アクセシビリティ、ユニバーサルデザインが含まれ、主に会場来場者への対応となります。組織委員会ではまず、国際パラリンピック委員会が公開しているアクセシビリティガイドの内容理解や国内関係法令の比較から行っています。例として、国際規格・JIS規格のピクトグラムの比較・選択や、会場周辺にある駅のエレベーターのお話がありました。車椅子が1台しか運べない11人乗りのエレベーターが日本の遵守基準に基づくサイズとなっていますが、2台運べる17人乗りのエレベーターが競技大会開催中は好ましく、鉄道事業者に設置に向けて交渉を行っているそうです。しかし、費用が鉄道会社負担になる、工事中は利用ができないなどの理由から、そう簡単にエレベーターの取り換え工事はできるものではないとのことでした。

ガイドラインを検討する協議会も用意されており、内閣官房、東京都、組織委員会でアクセシビリティ協議会を共催し、主に各部会における検討結果の審議や承認を行います。部会は、建築部会、交通・アクセス部会、コミュニケーション・サービス部会があり、実務者による協議及び調整が行われます。その際、障害者スポーツ団体や各障害者団体にも声をかけ、議論に協力していただくとのことです。

 

バリアフリーや表示サイン、2種類のガイドラインで実現

ガイドラインには下記の2種類があります。

1.ハード
新築工事や改修工事の計画がある施設のバリアフリー化を促進

2.ハード以外
1で未検討の項目について引き続き協議し、今年6月に国内で内容をとりまとめたもの。情報発信や表示サイン、輸送機関に関わる指針、大会スタッフのトレーニング指針を含む(カラーやピクトグラムなどの誘導など)

これについて下記のようなさまざまな項目を検討し、ガイドラインにまとめあげていきます。

(例)
・車椅子使用者の為に駅のホームには少し広めの場所が必要である。

・タッチパネル式券売機に対し、視覚障害者の方から、
  「サポートをしてくれる人をつけて欲しい。」などの要望をいただいた。

・電車の社内には、ベビーバギーや車椅子、大きな荷物を置けるように、
  各車両に椅子のない場所を設置する必要がある。
 

その他にも、バリアフリー実現に向けて、下記のような様々な課題に対して対応中であるとの説明がありました。


・盲導犬を含む補助犬に対してのバリアフリー。

・車椅子使用者、オストメイトに配慮したトイレ設備。

・刊行物の紙面のコントラスト、光沢、フォントの種類や太さ(基本的にゴシックを利用)。

・点字化、テキストデータ化、音声形式(トイレの場所案内など )。

・ウェブサイトの読み上げソフトへの対応。

・表示サイン
 国際的に認められたシンボル(ピクトグラム)が好ましく、コントラストがはっきりしたもの。
  (弱視の方や視力の弱い方に見やすいもの)を利用する。
 JIS規格とISO規格でシンボルが違うので検討が必要。)

・道案内のサイネージ設置は費用がかかるので、なるべくボランティアの配置を行う
  (ロンドン1212大会では大きな指差し表示をボランティアに持たせたことが好評だった。
 リオ2016大会でも利用する予定であり、東京2020大会でも利用を検討したい。)

・文字情報の発信
 競技会場内で聴覚に障害がある人たちに向けて、大型スクリーンに字幕を表示する。
 公式言語は英語・フランス語・自国語だが、どれもわからない人に対しての対応はどうするのか課題である。
 各企業が自動翻訳機(ポータブル)の開発中であることも視野にいれている。
 ボランティアには筆談用のメモ用紙を常に持っていてもらう。
 航空会社は電子コミュニケーションボードを開発中である。
 難聴の方に対し、それそれの補聴器に磁気を反応させて音声を増幅させる仕組みの設置も検討している。
  (会場近くの駅で対応してもらえるように期待したい。)

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ガイドラインの適用範囲も重要

健常者と障害者のアクセスルートが必ずしも同じにならないことを配慮し、アクセシビリティを必要とする各会場のエリア、動線となるアクセシブルルートを組織委員会が選定します。

(例)
・ある会場に向かう最寄り駅からの道には長い坂道があり、車椅子使用者には利用困難であり、
 別ルートを検討する。

・聴覚障害者に緊急時を伝えるフラッシュ付き警報機を設置。

・各会場のセキュリティのフェンスは高さ2.5mくらい必要であり、
 特殊な誘導をせざるを得ない公共機関がある。

・ゴールボールなどの試合中に音を止めなくてはいけない際の視覚障害者に対しての配慮・対応。

・会場外での大型鑑賞席の設置(大きな公園など)。

 

講義から広がる、ひとりひとりの関わり

講義の後半では質疑応答や意見交換が行われ、下記のようなやり取りがありました。

 

Q.組織として運営するなかで、ボランティアなどの新人に対してコントロールをする育成は紙面で行われるのでしょうか?

A.各国のオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は知識やノウハウを次に継承していく為に電子データとして残します。
ロンドン2012大会での記録も資料で見ることができます。組織委員会では、リユース・リサイクルをなるべく行い、無駄を出さないようにしているので、育成に対してもeラーニングやウェブなどを利用してあらかじめ情報を拡散しておく予定です。集合研修などは、各主要会場などで行う予定です。

 

Q.オリンピック・パラリンピック開催中でも普通に社会人は働いていると思いますが、ボランティアはほとんどが高齢者や学生を想定しているのですか?

A.学生や高齢者だけではなく、パートナー企業で働く人たちがボランティア活動に参加できるように各企業でマネージメントしていただけるよう呼びかけたいと思っています。

 

Q.車椅子を知り合いが使っていて、JRを利用するときは必ず付き添いをしていただいているとのこと。普通の改札でもスポーツタイプの車椅子ならあと5mm間隔を開けるだけで通れるそう。もしそれができれば、駅員さんの手間や負担が軽減できるのではないでしょうか。

A.鉄道会社では、万が一事故があった場合に備え、車椅子使用者の補助を必須としています。沖縄のゆいレールは電車とホームの間がフラットなので、補助なしでも大丈夫ですので、そういったアイデアを今後活かしていきたいと思っています。

 

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デジタルハリウッド大学大学院デジタルコンテンツ研究科
小山昌孝客員教授(担当科目:コンテンツ振興政策概論)

 

まだまだやり取りは尽きない中、惜しくも講義が終わる時間となってしまいました。この科目では、デジタルハリウッド大学院の学生たちが少人数でグループを組み、東京2020大会におけるICTの活用アイデアについて、最終講義にてプレゼンテーションを行います。これからいったいどんなアイデアが出てくるのでしょうか。いまから発表を聞くのがとても楽しみです。

 


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