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「ブロックチェーン概論」―所有の概念が変わる

佐藤智陽氏によるブロックチェーン研究会 第一回レポート

 

これまで所有権は人にとって、常に第三者によって証明されるものでした。政府や公証人、銀行などが権利を保証するという仕組みが長く続いてきました。ブロックチェーンはそれを変える可能性を持つ技術です。

6月9日に行われたブロックチェーン研究会「ブロックチェーン概論」は、個人と個人が仲介者を必要としないことで、個人がより力を発揮できるという、そんなブロックチェーンの未来を知り、入門する絶好の機会となりました。

当研究会は、スマートコントラクトジャパン株式会社 Founderの佐藤智陽氏によって主宰され、デジタルハリウッド大学院を会場として月一回のぺースで今後も開催される予定です。

第一回は、本学杉山知之学長の担当科目「テクノロジーカルチャーラボ」と合同で実施されました。研究会は遅くまで質疑が続き、最後に学長より「話は尽きないですね。こうした革新もインターネットというバックグラウンドがあって、成立している。10年20年たてば、今よりもものすごい性能のコンピュータがまた出てくる。そう考えると今課題になっているスケーラビリティなども乗り越えられて、ものすごい勢いでブロックチェーンやスマートコントラクトがビジネスとして成立する可能性は考えられる。中央集権的なものを壊すという意味でもとても面白い。定期的に研究会は開催していくので、これからも宜しくお願いいたします。」
と締めくくりの挨拶がありました。

ブロックチェーン研究会の予定は、デジタルハリウッド大学大学院 Webサイトで告知いたします

 

ブロックチェーンには二つの領域がある

一つは誰でも所持できるパーミッションレス(アクセス権が設定されていない)のもの。Coinmarket cap と言われるオープンなマーケット上に600個くらいのブロックチェーンで動作するブロックチェーンプロトコルが存在している。もう一つは、銀行や証券会社が実験しているパーミッションド(アクセス権が設定されているもの)のネットワークがある。

パーミッションレスなネットワークには利点と課題がある。課題は二つあり、スケーラビリティと、プライバシー。パーミッションレスを選ぶと例えばビットコインでは50Gにのぼるブロックチェーンのデータをローカルに持つ必要がある。そしてプライバシーに関しては、ビットコイン上ではすべての取引が公開されていて、隠すことができない。アドレスが誰のものなのか特定されると個人を特定できてしまうところに課題がある。

実証実験されているパーミッションドなシステムでは、スケーラビリティとプライバシー解決する。ただし、銀行間以外ではデータがら見れない、それではブロックチェーンが生まれた本当の理由、本当の利点は失われてしまっている。

パーミッションレスな仕組みの利点とは、検閲耐性、透明性、サービスの開始コスト、データの可用性、相互運用性(今の約束事が後々まで運用される。それによってシナジーが生まれる、電子政府などでも活用が期待される。)があげられる。

それぞれの特徴を比喩にすると、インターネットはパーミッションレスで、イントラネットはパーミッションドといえるだろう。

そもそも、ブロックチェーン誕生の背景とは何だったか。ビットコインが提起した問題点とは、今世界では第三者の介在なしに支払いをすることができないということ。取引コストがそれによって発生している。第三者の介在なしに実現する方法はないか。たとえば銀行の介在なしに、暗号化技術を信頼のベースにできないか。それがブロックチェーンの革新的なところであり、そこに可能性がある。この可能性の先にスマートコントラクト、契約の革新がある。所有権という概念が変革され、新しいサービスが生まれるのではないだろうか。

 

社会での応用領域

今の有用性は、検閲耐性というものが大きい部分を占めている。中国の国際送金制限をかいくぐっている人が多くのニーズを占めている。色々な会社がブロックチェーンの周りにできている。取引所、マイニングの機械を作る会社、マイニング工場を貸す会社、ウォレットの会社、ビットコインのデータを解析する会社、いろいろな会社が出たが、結構失敗した。

ビットコインだけで儲けるのは難しい、という結論が出つつある。

ストレージや認証などテクノロジーを使った別の利用が模索されるようになっている。トラッキングを監視する、サプライチェーンを監視するという利用なども考えられる。

今、出ているサービスをマトリックスにすると以下のようになる。

 

・パーミッションレスなサービスで本人確認が必要なサービス
→ 取引所、国際送金サービス等

・パーミッションレスなサービスで本人確認が不要なサービス
→ ウォレット事業者 マイニングマシーン等

・パーミッションドで本人確認が必要なサービス
→  企業会計システム等

・パーミッションドで本人確認が不要なサービス
→  銀行間取引 取引所間取引等

 

その他にパーミッションドで本人確認不要だが外に情報が出ないものとして、銀行内での実験用ネットワーク等がある。

ブロックチェーン関連市場については、経済産業省の資料でも幅広い業界が影響を受けると予測されている。

※「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」を取りまとめ
    http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428003/20160428003.html

 

技術的な概要

ブロックチェーンの技術を知るためには、「Mastering Bitcoin」という本がオススメ。ブロックチェーンがどういう構造をしているのか、ということが分かる。日本語訳も存在する。

そして、ビットコインを買ったことがない人は買ってみましょう。ビットコインを使ったことがないが事業検討している人、使ったことないけど取材している記者が多いけれども、使ってみた方が分かりやすい。

元々の仕様に沿ってブロックチェーンのコードを書くのは大変。そこでEthereumは、分散型アプリケーションを可能にするプラットフォームとして出来たもの。ホワイトペーパーで目指していることを知ることができる。まず取っ掛かりとしては、Ethereumのコードを書いてみると面白い。スマートコントラクト用のプログラミング言語Solidityというものもある。複数のノードがそれぞれに乱数を作ってしまうと、コンセンサスがとれなくなるので、

このプログラム言語を用いるとそうした現象を防ぐような仕様になっている。

ブロックチェーンを「見る」ためにはどうしたらいいのか。 ビットコインを買って送ってみると、その送金のトランザクションの状態がわかる。ブロックチェーンのデータベースをサイトで確認することもできる。 例えば、 http://https://bitnodes.21.co/ などで、確認できる。世界のノードの状態を確認できる。 あるいは、https://blockchain.info/  でも、リアルタイムに取引履歴を見ることができる。

ビットコインを「持つ」ためにはどうしたらいいのか。 ビットコイン取引所で現金と交換することで手に入る。 誰かにビットコインを送金したとき、この取引は正しい、確かに持っているという証明をする組織は存在しない。ブロックチェーンの中でお互いに証明しあうというところにブロックチェーンの特徴がある。たくさんのノードが合意していることで証明しあう。

ビットコインを「持つ」ためのウォレット(財布)は、法人が管理するものと、個人で管理するものがある。

取引所に置かれていると、取引所がハッキングされると盗まれる可能性がある。個人で持っている場合には、自分の秘密鍵をなくさなければ、なくなることはない。

実際に送金してみよう。フィーというのが送金のたびに取られるので、それがマイナーの報酬に付け加えられる。

Ethereumのトークンを作る仕組みはとても簡単。( https://www.ethereum.org/token )
すぐに、だれでも自分の仮想通貨(トークン)をつくれる。入力欄にしたがって作っていくだけで、完了する。Ethereumでトークンを作ることと、ブロックチェーンでビットコインを誰かに送金することは実は似ている。Ethereumは、ビットコインはその送金の仕組みをバーチャルマシン上で代わりに実行し「新しい仮想通貨」の動作を実現している。

たとえばTHE DAOという仮想通貨は、クラウドファンディングで170億円のお金を集めた。DAOは、この仮想通貨の発行を通じて様々なプロジェクトへの出資を行っている。

 

所有権が再定義される スマートコントラクトの可能性

ブロックチェーンの通貨以外の可能性とはどんなところなのか。

何かを所有しているということの証明は、今までは実際に持っていることとか、公証役場のような形でされてきた。これに対して公開鍵暗号をベースとして権利の証明を考え直すことができるのではないか、というところに可能性がある。たとえば、ソフトウェアの権利、あるは絵のライセンスをもっと使いやすい方式に変えることができるのではないか。

今までは、権利を中央集権化させたところが価値をとってしまっていた。

ブロックチェーンは、個人と個人が仲介者なしで交換できる仕組みなので、個人がエンパワーされる形で所有権、著作権、ソフトウェアの形が変わっていくのではないか。

インフラを作るというのはお金がかかる。Ethereumは、ブロックチェーンを用いたインフラです。作ることにお金がすごくかかっている。こんなものを作れるよ、というホワイトペーパーをEthereumの創業者たちが世界に送って、ビットコインと交換してくれないかと、みんなにお願いをしてできあがってきた。

こういうムーブメントを日本からも起こしていきたいと考えている。トークンでお金を得るのは「仮想通貨詐欺」になる可能性があるともいわれており、気をつけなければいけないけれど、自分が世の中に善になると思って、さらに自分が最初にきちんと作りこんで、提案するのであれば、良いのではないかと思っている。

 

会場からの質問

Q.世界中で新しくトランザクションが発生した場合に、最終的に信頼性が高い情報を決めるためにどうしたらいいのか。
A.どちらの状態に収束させるか、最長のチェーンを正とするという合意の取り方をしている。最長の状態とは何かというと、チェーンの次のブロックを見つけるために大量の計算をする必要がある。その計算をすると報酬がもらえるようになっている。結果すべての計算が速く長いチェーンとなったものが正しく、その計算の競争によって、より正しい状態が保たれている。

 

Q.最長じゃないチェーンは消えてしまうのか。
A.ブロックチェーンがフォークしたときには、どちらかに収束できるように最長な方を支援するようなアルゴリズムがある。

 

Q.ビットコインは採掘されて枯渇してしまうということはないのでしょうか。また価格はどう決まるのでしょうか。
A.ビットコインの総数が決まっているとみんなが信じている。供給はこれだけという供給数は明示されている。だからいつかは供給はされなくなるという前提でいる。価格がどう決まっているのかについては、世界の取引所で取引の平均値で決まっている。昔10,000Bitcoinが、ピザ一枚と交換された。なんと、今でいうと5億円のピザになったことになる。

 

Q.日本で法律的なビットコインの裏づけが決まったので価格が上がったのでしょうか。
A.あるかもしれないですね。マウントゴックス以前は、取引所内にコインがプールされているなど価格に不透明な点があった。その時の飛びぬけた価格を除けば、長期的に見ればなだらかに次第に価格が上がってきているといえるのではないか。

 

Q.いつでも、換金はできるのでしょうか。
A.取引所で取引をすると可能になります。

 

Q.取引所での換金をするのですか。
A.ネット証券と同様に自分の口座に振り込みができます。

 

Q.ビットコインの秘密鍵の文字列はどう保管しておくのがいいのでしょうか。
A.頭の中に入れておくのが一番いいですね。あるいはキーチェーンなどのアプリに入れておくのがいいかもしれないですね。

 

Q.価値が何で生まれるのか、何でDAOが170億円を集められるのか。
A.色々な仮想通貨が、こういうことをやりますという将来の約束でお金を集めている。金とペッグして兌換できる通貨にする、とか、予測市場として使うとか、色々なものがある中、DAOがなぜ集めているのか、ということは分からない。みんながDAOの目指しているものを信じているということだろう。
A.会社として株主から集めるという考え方もあるし、通貨をファンド的に考えてビットコインで集めて持っている人たちを株主のように考えるとか、色々な応用が考えられる。DAOはコインをもっている比率によって投票ができ運営方針にかかわることができる。

 

Q.DAOにお金を出す人の狙いはキャピタルゲインなのでしょうか。
A.インカムゲインもある。DAOには色々なプロジェクトが提案されて資金が投下される。airbnbのようなものをairbnbなしで実現するIoTロックキーをつくるドイツの会社などもある。ただDAOの中でも色々な問題がある。政治のようなことにもなる。たとえば、20億円の出資をとるために、20%しか投票がいらない。それは大多数のコイン所有者が投票に関心を持っていないからだ。

 

Q.ビットコインの信頼の崩壊が起きる可能性はあり得るか。
A.あり得る。マシンパワーが中国など特定の国に集中しているなどという話もある。信頼に関しては、今のビットコインの状況をWebサイトで確認する他ない。常に公開されている透明性があるということが信頼の根源になるだろう。

 

Q.自分もノードになりたい場合はどうしたらいいのか。ノードになるのはボランタリーなものなのか。
A.Bitcoin Coreなどのウォレットをダウンロードすれば、フルなノードになれる。50Gのトランザクションがダウンロードされる。またノードになるだけでは、特にそれで何かもらえるわけでなくて、コミニティに貢献しているだけ。ただ、データ解析はできるので、そのデータ解析結果を人に売っている人もいる。

 

Q.スケーラビリティの問題は解決されるのか。
A.色々なソリューションが提案されている。例えばEthereumは、そこを解決するためにマークルパトリシアツリーというデータ構造による、ツリーを3つ用いて、今の世界の状態を一つのブロックから把握できるようにしている。しかし、データ構造的には効率的なのだけど、昔からのトランザクションを保持しているビットコインの仕組みの方が空間効率は悪いが、冗長性は高い。しかし空間効率が悪くデータ容量が大きくなることによって、ノードにフルのブロックチェーンを保存することができなくなり、ノードの分散化の障害となる。(現に2016年6月現在Ethereumのノード数の方が、Bitcoinのノード数よりも多い)BitcoinはC++で動いているコードが詳細設計仕様のもととなっており、それで大きな価値や、ビジネスを載せて既にネットワークを既に形成してしまったためプロトコルを変えるのが難しくなっているが、。対して、EthereumはYellow paperという詳細設計仕様があり、それに基づき、最も現在普及しているGoのクライアントを含めC++, js, python, haskell のクライアントの実装を進めている。

 

Q.例えば1DHWというコインをみんなが価値あるものと認めるためにはどんな条件が必要になるんでしょうか。
A.価値を担保しようとした時には三つの考え方がある。USDなどの既存と同じ価値ある通貨を作りたいというニーズがある。そのために1USDと交換する誰かがいて交換を実施する。2つめは何か別のアセットを裏づけにして通貨を作る。3つめは、供給量自体を変更する、価格が変わってきたら供給量を変えて調整をする。こういった3つの方法がある。 ただコインの価値そのものは、あるコミニティが通貨価値を信じるかどうかで決まっている。アーリーアダプター的な人が今は信じている。そのため、何の価値に紐付けてどう使うのかが、非常に大事になってくる。

 

Q.価格の変動の大きさがビジネスのやりづらさに繋がるのではないか。
A.EthereumにはGAS(ガス・燃料)という仕組みがある。取引手数料やスマートコントラクトの実行手数料が1GASとして定められている。これが1 Ethereumの交換価格を決めている。このGASが報酬として与えられるマイナーが使いやすいように一定の価格に安定的に近づくようにする仕組みがある。マイニングに対して価格が安すぎるとなると上昇し、上がりすぎると安くなる。
だから、安定している通貨の価値が高いと思うのであれば、マイナー自身の労働の価値に通貨を裏付けさせるという方法もとれる。ただ安定的な価格はユーザーは使いやすいが、投資しようと思う人は安定的だと投資価値がないと思う、という難しさがある。 ただ、この考え方は、非常に可能性があって面白い。変動が許される通貨と、安定的な通貨と、変動を吸収する通貨を、うまく組み合わさると今までにない通貨、通貨の問題点を乗り越える通貨になっていく可能性もあるのではないか。

 

Q.不動産の場合は、取引の場合は司法書士がいて、登記局が承認をするシステムがある。より安全な承認の仕組みなどはあり得るのか。
A.不動産登記の承認をブロックチェーンで行い、その書き込み権限は司法書士が持つというようなことにして一部パーミッションドにする。書き込んだ履歴そのものはパブリックにして透明性を高めるというようなことは考えられるのではないか。司法書士や公証人など権限を持っている人がうそをついた場合に備えた保険というものがアメリカにあるが、ブロックチェーンを使えば、ワールドワイドな検証可能な公証所が作れるかもしれない。

 

ブロックチェーン研究会 今後の予定

第二回 7月12日(火)19:30-21:30 ※終了
第三回 8月11日(木)19:30-21:30
第四回 9月08日(木)19:30-21:30

ブロックチェーン研究会の予定は、デジタルハリウッド大学大学院 Webサイトで告知いたします

 

主宰

プロフィール

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佐藤 智陽 氏(さとう・ともあき)

1993年東京都生まれ。開成高校卒業後東京大学に落ち早稲田大学に入り、人生を見直す中、イスラム教の方への地図アプリを提供する株式会社islamapを設立、イスラム金融での収益化を模索する中Bitcoinを深く調べるようになり、 ブロックチェーンのテクノロジーと、その背後の分散型の思想(Decentralization)が今後の社会基盤になると確信する。
Mt.Gox の影響もあり、日本で普及が遅れているブロックチェーン普及のため、2015年からSmart Contract Japan を開始し毎週の勉強会を行い、2016年海外のブロックチェーン関連企業ConsenSys 社等と共にEthereumを中心としたコンサルティング事業を行った。

現在はそのコンサルティング会社を新しい挑戦のため辞任し、誰もが挑戦しやすい社会を目指して、ブロックチェーン上のトークンを用いて世界の仲間と長期的なインセンティブの共有が出来るグローバルなCrowdFunding/Sourcing プラットフォーム、Starbaseを制作している。

 


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