Olga「メタデータが創る、無限の可能性。」

ファッションを学ぶと聞くと、一般的にはデザインやパターンなど、作り方を習うという認識がいまだ高いかもしれません。しかし、「衣食住」という言葉に代表されるように、衣服とは生活の基盤を作る大切な要素であり、日本経済を支えている一大産業でもあるのです。最近では、EC市場の著しい進化により、アパレル業界は従来の手法を抜け出し、流通やサービスを軸とした新しい取り組みにチャレンジしています。

販路や表現方法が多角化するなか、顧客データの分析やそれに基づくコンサルティング、また体型データを集積し、新たなクリエーションのリソースにするなど、ビジネスモデルも拡大する一方です。この基盤となっているのが、ファッションを通して得られるマスデータです。たとえば、時計などのウェアラブルデバイスを通じたセンシング技術の開発が進んでいますが、近年では洋服にこの機能を追加することができないだろうかという研究も進んでいます。

センシングが可能になれば、着るものによる行動パターンの違い、着回す頻度や購入から買い替えまでの期間などを測りながら、購入ルートとの連携やさらなるサービスの追加ができるかもしれません。また、体調や気分なども含めたその人にあった服のあり方など、より暮らしに役立つリアルなサービスや先の時代を予測したデザイン提案も可能だと考えられるのです。

そもそも人はなぜ服を着て、身体を飾るのでしょう。同じテイストのファッションをしている人に親近感を覚えると同時に、まったく同じ服をきている人と出会うと気まずい感覚に陥ることを鑑みると、ファッションは社会と自分の関係性を図るコミュニケーションツールであるようにも思います。洋服にはその人らしさを示す情報が驚くほど蓄積されており、無意識のうちにそれを他者が見分けやすいような形でビジュアライズしているのがスタイリングだとも言えます。

ファッションはクリエイティブで専門性の高い世界だと考える人もいますが、これからの時代はファッションが蓄積する膨大なデータを、いかに社会的価値に転換し、無限の可能性につなげていけるかがポイントになることでしょう。

Olga
大学でファションデザインを学んだ後、渡英。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでファッションテクノロジーを学び、帰国。自身のアパレルブランド「Etw. Vonneguet(エトヴァス ボネゲ)」を立ち上げ、デジタルツールを駆使した新しい服づくりにチャレンジする。2017年よりデジタルハリウッド大学大学院専任助教に 。担当科目: ファッションテックラボ