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「現代における映画製作概論」第2回特別公開授業
~映画業界を牽引する放送局、責任者は今何を考える~

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近年は、邦画バブルと評されるほど数多くの日本映画が製作され、公開されてきました。2000年以降、放送局の積極的な映画製作は、その年の興行収入の上位作品の大半を占めるほど顕著な形で現れており、放送局を中心とした映画製作の流れは一般化したと言えるでしょう。今回の『現代における映画製作概論』第2回特別公開授業では、各放送局の映画製作事業を担当する責任者をお招きし、映画製作事業に対する考え方、今後の戦略、展望などを語っていただきました。

各放送局の映画事業の現状

濱名 一哉 氏(はまな・かずや)

TBSテレビ コンテンツ事業局映画事業部長

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TBSの映画事業はここ1、2年とても良い形になっていると思います。21世紀に入っていくつかヒットが出てきましたが、2004年の『世界の中心で愛を叫ぶ』以降、30億~50億のヒット作品をコンスタントに製作できる様になってきました。2008年には「花より男子ファイナル」、「おくりびと」、「クローズZEROⅡ」、「ROOKIES-卒業-」などの各種ヒット作品を生み出すことができました。

TBSでは映画における普遍性、時代性、多様性を鑑みながら、観客のエモーションを引き出すことを重視しています。テーマがはっきりしていればはっきりしているほど、エモーションを引き出せると考えています。そのため、製作している作品はバラエティーに富んでいるといえるでしょう。色々な作品の可能性を追求したいと考えています。

興行収入に関して言えば、TBSでは年間10本、興行収入200億円が基準となっています。その基準を達成することは、なかなか難しいといえます。しかし、「花より男子ファイナル」から「ROOKIES-卒業-」までの直近10作品の興行収入は350億円を超え、今後のTBSの映画事業に弾みがつくものと思っています。

奥田 誠治 氏(おくだ・せいじ)

日本テレビ コンテンツ事業局コンテンツセンター エグゼクティブプロデューサー

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日本テレビの映画戦略として特徴的な点は2点あります。まず1点目は自社企画作品が充実している点です。これは企画本位で作品を捉え、映画ビジネスとコスト意識の徹底をしていることに由来します。それは、プロデューサー陣の充実、AX-ONと外部プロダクションとの繋がり、社員監督の充実などによって可能になっています。また、2点目はアニメが充実している点です。スタジオジブリ、トムスエンタテインメント、マッドハウス、プロダクションIG、スタジオカラーなど様々なアニメプロダクション様との繋がりがあるからです。

ちなみに日本テレビの映画作品は、「ALWAYS 三丁目の夕日」、「DEATH NOTE」、「20世紀少年」などに代表されるように、「男女の恋愛」についての作品がありませんでした。これは恋愛モノをやりたいプロデューサーがいなかったからです。日本テレビの映画製作では「プロデューサーが何をしたいか」ということが大きな影響を与えているのです。ちなみに、今年「僕の初恋をキミに捧ぐ」という恋愛作品が公開されます。今後は観客にとって面白くて為になるという内容的な成功と、興行的な成功の両立ができる作品製作を目指していきたいと考えています。

日本テレビの昨年度の興行収入は『崖の上のポニョ』も加えると約327億円となっています。映画事業部は会社から「営業外の収益」として期待されていると思っています。海外収入も「DEATH NOTE」以降、ルートが確保できましたし、何よりもライブラリーの収入が大きいことが、映画事業部の特徴でもあります。

清水 賢治 氏(しみず・けんじ)

フジテレビ 映画事業局 局次長

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フジテレビでは通常年間10本~12本程度ですが、2009年は過去最多の16作品を公開します。このラインナップの方針ですが、まず、収益を見込める作品、すなわち20~30億円の興行収入を確実に見込める作品をメイン作品として決定します。残りは企画者やスタッフの趣味や遊び心を取り入れて作品を決定します。この「遊び」の部分がなくなると翌年やその先に新しい作品が生まれなくなってしまうのです。そこから生まれた作品の代表例としては「ウォーターボーイズ」などが上げられます。

我々の映画事業局は編成局から独立して現在6年目です。収益はある程度予想がつくので、本当は当たる作品だけやっていけば収益は確保できます。しかし、未来のことも考えながらラインナップを決定しています。それにはフジテレビの意思決定体制が大きく関与しています。フジテレビでは局長レベルで決定できるので、企画を通しやすい風土があります。とはいえ利益予算は年初に求められるので、その利益の必達はコミットメントしなければなりません。

このように「全員がつくれる体制」を整えていると同時に、アーカイブの二次利用利益が利益の下支えしてくれている点も、「全員がつくること」に集中できる要因です。興行収入の波に飲まれないように、アーカイブ利益が3割程度あると収益が安定します。

梅澤 道彦 氏(うめざわ・みちひこ)

テレビ朝日 編成制作局映画センター長

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テレビ朝日の映画ビジネスは「放送番組」を中心としている点に特徴があります。本日いらっしゃっている他の3局さんは「映画事業部」体制ですが、テレビ朝日にける映画ビジネスは「編成・制作局」において行っております。

その上で、大きな特徴は2つあります。それは40年以上続いている「日曜洋画劇場」を中心とした、「テレビ放送」と連動している点です。「座頭市」や「武士の一分」などは映画大作として製作し、放送したケースでした。「TRICK」や「相棒」はテレビ朝日のドラマを映画化したケースです。洋画大作との出資連動としては、「HERO」や「レッドクリフ」が上げられます。いずれのケースも「テレビ放送」と連動しています。

また、もう一点はアニメーションと特撮番組がテレビ朝日の映画ビジネスを支えている点です。こちらも放送を軸にした映画化です。アニメーションでは例えば「ドラえもんシリーズ」は80年~09年まで全29作品、興行収入は累計で約900億円を突破しています。また、「クレヨンしんちゃん」は93年から09年まで全17作品、興行収入は累計230億円を突破しています。特撮では「仮面ライダーシリーズ」が効率の良い利益を上げています。この3タイトルで興行収入ベースの40%を占めていることがテレビ朝日における映画ビジネスの特徴です。

映画業界の現状についての認識

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濱名氏:
各局ともにオリジナル、アニメなど多岐にわたって多様な展開を進めており、テレビ局ほど邦画に貢献しているメディアはないと思っています。勿論、配給・興行の「箱」は重要だと思っていますが、コンテンツがなければ映画ビジネスは始まりません。

奥田氏:
テレビ局の場合、映画製作が「ビジネスになるか」まで考えます。お客様が何を見たいのかを徹底的に考えます。しかし映画会社は「企画」と「展開」の担当が別々になってしまい、最後まで一貫していないのではないでしょうか?

清水氏:
日本は世界の第2のマーケットですが、それにしても本年は洋画が予想以上に伸び悩んでいますね。2000年以降、洋画が下がった分を邦画が食っている…というような論議がありますが、この傾向が続けば日本の映画マーケットは衰退してしまうのではないかという危惧を抱いています。大量宣伝のメリットは認知度が上がることですが、作品の魅力度には影響しません。作品タイトルを知っているけど見ないという人がいるのであれば、結局観客を動員できるかは「作品そのもの」が決定要因になるはずです。現在、邦画が当たっているので、出資してくれる会社があるわけです。しかし、今後お金のない業界になってしまうと、人材は集まらなくなります。言い換えれば、「ジャパニーズ・ドリーム」が日本の映画業界に存続しつづければ、人材は集まり続けるといえますね。

梅沢氏:
「ドラマの映画化」は最近のトレンドだと思います。テレビ朝日のケースになりますが、テレビドラマは自分のセクションでの企画ではありませんし、各局でも同じことだと思います。「ドラマの映画化」に関しては、製作者、ディレクター、出演者などの気運によると思います。単にドラマを映画化すれば良いというわけでなく、あくまでもビジネスとして成功させることを主眼に置いています。テレビ朝日で上手く結実したケースは、今年の『相棒』だったと思います。ドラマの枠の数を考えても、全部が映画になるわけではありません。また、テレビは視聴者にとって無料コンテンツである一方で、映画は観客にとって有料コンテンツであるという点も、大きな違いです。

濱名氏:
「ドラマの映画化」ということで言えば、TBSの「ROOKIES-卒業-」はあらゆる展開の仕方、ビジネス面で戦略的、かつ計算しつくされた展開だったと思います。「オフィシャルスポンサー」という制度はスポーツには今までありましたが、映画では初めての試みだったと思います。これは「無理」、「規制」などの「不可能」という概念を持たずに、営業マンが熱意をもって動いてくれたお陰だと思います。

奥田氏:
邦画のみならず、洋画も含めて日本の映画マーケットを盛り上げていきたいですね。ただ、中国や韓国のコンテンツに流れていかないか…という点は気になっています。

清水氏:
洋画が全世界をマーケットとする一方で、今まで邦画は日本マーケットに限定して作られてきました。今まで洋画が圧倒的な「バジェット」をもって圧勝してきました。しかし、作り手のCGやVFXの技術の向上と一般化に伴い、作り手のレベルが向上し、日本の映画も世界展開が期待できると思っています。

濱名氏:
そういう意味でも、「強烈なエネルギー」と「独自の価値観」を持っている方々に日本の映画業界を盛り上げていって欲しいですね。この業界で本当に成功を収めている人は、気がついたら独自の道を切り開いている方ばかりです。結果を残すことでしか生きられない業界であるといえます。「組織」で製作していくという点ではバランス感覚は必要です。しかし、「強烈なエネルギー」を持っていることが私はとても重要だと思っています。

(取材・原稿 熊谷有加)

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