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第5回Think!×デジハリ×ジョブウェブ 誌面連動セミナー
「映画ビジネスの新手法とプロデューサーに求められる役割」

今年5月に公開されたアニメ映画 「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIEII ~私を愛した黒烏龍茶 や、今年の夏に公開され9月26日にはDVDも発売された映画 「東京オンリーピックでは、プロダクト・プレースメント(作品中に商品を登場させる広告手法)、ネーミングライツ(命名権)など、映画ビジネスにおける新しいビジネス手法が試され、多くのマスコミがこのことを取り上げ話題となりました。

セミナーでの亀田教授

プロジェクトの収入が支出を上回る戦略を組むことは、プロデューサーの重要な役割であり、さまざまな新手法もその戦略の一環といえます。映画ビジネスの新手 法がどういう発想から生まれ、どのように具体化されていったのでしょうか。また、今後どのような可能性が考えられるのでしょうか。

大手広告会社所属の映画プロデューサーとして上記2作品のプロデューサーを務め、デジタルハリウッド大学大学院の教授でもある亀田卓教授が、オーソドックスな映画ビジネスを解説しつつ、映画ビジネスの新手法からプロデューサーに求められる役割について講演しました。

アニメ 「秘密結社 鷹の爪」
世 界征服をたくらむベンチャー秘密結社 鷹の爪。そして、彼らの野望を阻む正義の味方・デラックスファイター。何をやっても失敗ばかりの鷹の爪団と、正義なのかよくわからないヒーローとのやり取 りを描いた世界征服コメディ。 2006年4月から6月にかけて「THE FROGMAN SHOW」(テレビ朝日系)内で放映され大ブレイクした、蛙男商会の代表作。

「東京オンリーピック」
「Only」+「Pictures」=「OnlyPic」(他にない唯一無二の映像作品)真島理一郎監総監督による日本、アメリカ、イギリス、アルゼンチンの国際クリエイターによる架空のスポーツ競技を映像化したもの。

コンテンツをビジネスとして成立させるプロデューサーの役割

「日本はモノづくりの国だなぁ」

これは亀田教授の経験から出た言葉です。エンターテインメントのファイナンスをする会社への出向で100人ほどのプロデューサーとの面接を経験し、また現在 は自身もプロデューサーをしている中で「モノを作ることに関してはものすごく情熱もあるし、パワーもある。けれども、そこをビジネスに変えていく力が弱い」 と感じているそうです。

「エンタテイメントやコンテンツの世界にずっといる人は意外とビジネス感覚が少ないんですね。やはりビジネス 感覚を持っていなければ資金調達は難しい。ビジネスプロデューサーを育てないといけません。クリエイターは芸術家でいいと思うのですが、プロデューサーだったらビジネスマンであって欲しいのです。まず顧客が何を望んでいるかを考え、そこに自分のやりたいこととマッチさせていくという発想をしなきゃいけな いですね。投資家からの大切なお金を預かる身という自覚が必要です」

「プロデューサーに望まれていることは人・モノ・金の最適な分配を考えることです。監督やカメラマン、脚本家などの才能を見つけてきて組み合わせることで面白いものが出来るのではないか、と考えるのは面白いですよ。重要なのは目利きと実行力です」

常にアンテナを張っていることが大切だと伝わってきました。

Web2.0時代を逆手に取った新しい仕掛け

セミナー会場の様子

今コンテンツ業界は “デジタル化による波" にの影響を受けて揺れています。コピーが簡単に出来るようになりましたし、コンテンツ業界の人だけでなく誰でもコンテンツを配信できるようになりました。 そんな中で、監督も脚本もアニメーションも声優もすべて一人でやり、アニメ 「秘密結社 鷹の爪」を作り上げたFROGMAN氏が登場します。彼は自分の作品をWebで配信し始めて、それからほぼ1年でテレビでのレギュラー放映が決まりまし た。そのきっかけとなったのは2ちゃんねるの掲示板。「続編を作ってくれ!」その声に応えて、DVDを5000本自分で手売りするほどまでになり、注目さ れたのです。

亀田教授はFROGMAN氏を “Web2.0時代の申し子" と称します。フラッシュアニメがテレビでレギュラー化された事実を新聞で知ったときには、革命が起きたと思ったそうです。新しい技術を使ったことで、アニ メーションの製作費が20分の1に落ちたというのですから、確かに革命的です。従来の映画では、制作費はプロデューサー、監督、キャストに払う費用、ス タッフの人件費や機材費などを合わせて制作費とします。よって、一人で作り上げることにより人件費の削減を、すべてフラッシュアニメーションで作り上げる ため機材費の削減を可能にしたのです。ここでビジネス感覚を持った亀田プロデューサーのアンテナが反応しました。

「ビジネスチャンスだ」

映画製作における新しいビジネスモデル事例解説 ~プロダクト・プレースメント~

デジタル化によって削除も容易になり、CMカットが簡単にできてしまう技術が普及しつつあります。「飛ばされないためにコンテンツと広告を一体化させ、広告 自体を魅力的なコンテンツにするという発想に自然になりました」と語る亀田教授は、作品中に商品を登場させる広告手法であるプロダクト・プレースメントに 注 目していました。しかし、今までのプロダクト・プレースメントは出し方がさりげないのが通例でした。芸術性を重んじるため、普通なら、99%の監督が嫌が るのです。

そんな中、やってみたい、という亀田教授の提案を FROGMAN氏はあっさり承諾し、さりげないどころか目立つ仕組みを作り上げました。その名も “バジェットゲージ" 。その名のとおり、映画上映中に予算の残量の移り変わりが分かる、プロダクト・プレースメントをネタにした画期的な仕組みです。緻密な背景や映像や豪華な CGを出すと、ゲージがいっきに下がり、広告の商品が登場するとゲージが上がる、というわけです。

FROGMAN氏の制作する作品は、 シュールナンセンス ギャグだったため、なんでもできると考えた亀田教授は、110社以上声をかけ、22社と契約したといいます。あらゆる商品を映画の中から探す、そんな普通 の 映画とは違った楽しみ方が話題を呼びました。こうしてお客の心をつかみ、プロダクト・プレースメントを出すシーンで笑いが起こるという現象を生んだのです。

映画製作における新しいビジネスモデル事例解説 ~ネーミングライツ~

亀田教授の講義に集中する参加者の様子

さらに 「鷹の爪I」 ではタイアップという形でも広告効果を狙っています。

「タイアップですとお金を発生させずにお互いが宣伝することができるので、ソニーミュージックさんとタイアップの模索をしました。そんなときUKチャートで1位をとったthe HOOSiERsと いうバンドが日本に上陸すると聞き、主題歌にthe HOOSiERsの 『Goodbye Mr.A』を採用しました。さらにFROGMAN氏が、悪役の名前を 『Mr.A』 にしましょう、という提案をしてくれたり、the HOOSiERsを映画に登場させるなどプロダクト・プレースメントならぬ、キャラクター・プレースメントも実現しました」

こうした様々な新しい取り組み により、制作費と並ぶ大きな支出である広告費も削減することが出来たのです。

続いていく新しいビジネスモデルによる映画製作

亀田教授はこの夏に公開されたデジタルハリウッドの卒業生である真島理一郎氏が総監督を務める 『東京オンリーピック』のプロデュースにおいても、新たなビジネスモデルを実践に移しています。

「ソ ニーミュージックさんとのタイアップにより、公式テーマソングが中川翔子さんの 『Shiny GATE』に決まりました。さらに映画の中にも出演してくれていますので、どういったシーンで出ているのかはぜひ見てみてください。そして 『Shiny GATE』 のPVは、真島さんが監督して東京オンリーピックの16番目の競技という形になっています」

そういって見せてくださったPVでは、女子シンギング・アイドル級・・・と流れるナレーションに思わず笑いがこぼれました。またC1000レモンウォーターとのタイアップもしています。

「東京オンリーピックのメイン会場が新国立競技場という架空の競技場なんですけれども、そこのネーミングライツをレモンウォーターに差し上げ、『C1000スタジアム』とすることで、パブリシティにも取り上げてもらえました」

ビジネスはこうして生まれる

グループワークを取り組む参加者

このように新たなビジネスを開拓していく亀田教授の言葉で印象に残った言葉がありました。

「みなさん、出来ないことはないと思ったほうがいいですよ」

思わず自分でも何かを始めたい、そんな気持ちが湧いてきます。そして講義の最後には 「東京オンリーピック」 の新競技を考えるワークショップが行われました。 テーマは 「皆さんが実際に提案できる相手を想定した東京オンリーピックのタイアップ」 です。自分が宣伝部長になったつもりになって考えてください」このような亀田教授の実践的ワークショップは、実際に実現してみたいという熱の入ったプレゼ ンが繰り広げられ、とても盛り上がりました。

「いいアイディアは参考にさせていただきます。実際に連絡をくだされば何かできるかもしれません。講師と生徒の関係で終わるのはもったいないですよね。ぜひ一緒にビジネスをしてやろうという気持ちで望んでください」

ビジネスがここから生まれるかもしれません。


取材・原稿 小島千絵

写真:亀田 卓 専任教授

プロフィール

亀田 卓(かめだ たかし)

デジタルハリウッド大学大学院教授 (担当科目:映画製作におけるファイナンスとリクープ

早稲田大学政治経済学部卒業。1984年大手広告会社入社後、テレビ局担当としてテレビ番組を通じ様々なコンテンツビジネスに携わる。営業局に異動して金融 機関を担当。その後、エンタテインメントと金融を融合させるビジネスを志し、2001年(株)東京ファイナンス・アンド・エンタテインメントの代表取締役 に就任。当時開発・実践した、匿名組合を利用した公募の手法は今ではエンタテインメント証券化のスタンダードな手法の1つになっている。現在は大手広告会 社で映画投資ビジネスに関わっている。

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