教員インタビュー

テクノロジーの力を駆使して教育の世界に劇的なイノベーションを

日本電信電話株式会社(NTT)でのマーケティング、経営企画業務や、無料ISPライブドアの立上げに参画し、コーポレートストラテジーやビジネスデベロップメントに携わり、『人と企業の成長支援企業』株式会社グローナビを立上げた佐藤昌宏教授。

本大学院においては「デジタル技術を活用して新しい教育を創る」ことを目的とする「エフェクティブ・ラーニング・ラボ」(佐藤昌宏研究室)を主宰。テクノロジーにより教育にイノベーションを起こすムーブメント、「EdTech」分野のフロントランナーとして、EdTechスタートアップの想いを発信するイベント EdTech JAPAN Pitch Festival や大企業によるEdTech支援プログラムEdTechCampのプロデュースなど、教育×ICTの先端動向を牽引しています。

 

スタートアップのクリエイティビティや
スピードを教育に取り入れる「EdTech」

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私が実務家として、また教員としてライフワークとしているのが、「EdTech(エドテク)」と呼ばれる“テクノロジーによる教育のイノベーション”です。もちろん教育の分野へのテクノロジーの導入はこれまでにもありました。eラーニングがその代表例です。しかし、eラーニングは学習コンテンツをデジタル化しただけで、教育のあり方を本質的に変えるものではありませんでした。それに対して、2010年頃からシリコンバレーを中心に生まれてきたEdTechは、ベンチャー企業などが持っているスタートアップのクリエイティビティやスピードを教育の世界に取り込んでいこうというムーブメントです。例えば、3Dプリンタやレーザーカッターなどのテクノロジーを活用し、子どもたちにどんどんモノを作らせて失敗から学ばせるファブラーニングもその一つ。従来型の教育では失敗しないためのマネジメントを教えていましたが、テクノロジーの進化で今は失敗のコストが安くなりました。であれば、失敗しないやり方を時間をかけて考えるより、やって失敗して、その失敗から学んでまたやるほうがクリエイティビティもスピードも高まる。EdTechはこのように教え方や学び方を劇的に変えるものなのです。

「教育」を超えた「学び」を実現するために
今、ベンチャー企業の力が求められている

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そのほか、クラウド技術を活用し、教育現場のビッグデータを集めて学習ログを解析することによって、一人ひとりに合った学習の道筋を提案する(=インストラクショナルデザイン)ための仕組み作りなども産学官連携で実際に進められています。このようにテクノロジーを活用すればさまざまなかたちでの教育のイノベーションが可能になる。「ラーニングオーバーエデュケーション」と言われているような、今までの「教育」を超えた「学び」が手に入れられる時代になっているのです。では、このイノベーションを担うのは誰か?教育の世界の中にいる人たちには大胆な改革は難しい。今、求められているのは外部の素人の視点なんですね。特に重要なプレーヤーとなるのが自身でスタートアップを経験しているベンチャー企業です。今も、まだ数は多くないものの全国にEdTechによるイノベーションを志すベンチャー企業が生まれています。私もその一員として、「EdTech JAPAN Pitch Festival」という普及のためのイベントを開催するなど、多角的に活動しています。教育分野の改革は確かに難題も多いですが、国も教育の情報化に取り組み始めており、今はまさに大きな石がゴロリと動き始めた時期と言えますね。

ラボは実践の場。ラボのメンバーはそれぞれ
自分自身でイノベーションを追求していく

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デジタルハリウッド大学院で私が主宰する「エフェクティブ・ラーニング・ラボ」はこのEdTechを研究テーマとしています。現在は7人の院生が参加しており、EdTech 関連の経営者が4人、さらに、アメリカ人、カンボジア人、中国人と3人の留学生もいて、非常に多様性のある研究室ですね。eラーニングとEdTechの違いなど基本的知識のレクチャーはしますが、原則は実践の場です。私は何かを教えるというより、EdTechに関する自分自身の実践を見せます。学生はその背中を見て、「自分ならテクノロジーを使って教育をどう変えられるか」をそれぞれに考えます。2014年度は、ラボのメンバーでApple社の位置情報サービス「iBeacon」を使ったアプリを開発して、子どもたちがスタンプラリー形式で能動的・自律的に学べるシステムを研究し、実際に小学校で実証実験も行いました。iPadを手に学校を探索し、目的地に近づくと画面にテキストでヒントが出てくる。さらに近づくと今度は映像でヒントや指示が表示される。それに従って音楽室のベートーベンの絵にiPadでタッチすると正解。ベートーベンの説明動画が流れるという仕組みです。これなら子どもたちも楽しみながら勉強することができますよね。

テクノロジーによって社会を変えることに
ワクワクできることがイノベーターの条件

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ラボでまず伝えたいのが“社会を変えること”へのワクワク感です。ICTの世界にいる人間は、例えばiPhoneを手にしたときのライフスタイルやコミュニケーションスタイルの劇的な変化などを通してその感覚を知っています。これはイノベーションに取り組むうえでは大きなアドバンテージです。自分自身がテクノロジーのすごさを実感し、ワクワクしている人でなければ、周りを巻き込み、社会を変革していくことはできませんから。ラボに集まる院生に求めるのも、「テクノロジーを使ってこんなことをしたい!」という“想い”です。もちろんテクノロジーに関する知識やスキル、教育に関する知識もあるに越したことはありませんが、深い関心や課題意識があればいくらでもキャッチアップは可能です。想いから生まれるエネルギー、そして「テクノロジーを使って何ができるか」を発想できる力こそが何より大切なのです。そういうラボですから、教育に関する新しいビジネスに取り組んでいる起業家にぜひ集まってもらいたい。もちろんそれをめざしている人たちも大歓迎です。入学前でも構いませんから、ビジネスモデルやプロトタイプ、アイデアなどをどんどん持ち込んでほしいですね。

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プロフィール

佐藤昌宏 専任教授

株式会社グローナビ代表取締役社長

1992年、日本電信電話株式会社(NTT)入社。マーケティング、経営企画業務に従事。1999年、無料ISPライブドアの立上げに参画。コーポレートストラテジー、ビジネスデベロップメントを経験。2002年、デジタルハリウッド経営企画執行役員に就任。2005年、『人と企業の成長支援企業』株式会社グローナビを立上げる。人材育成に関するコンサルティング事業、E-ラーニングシステム開発及び、セミナー・交流会ポータルサイトを運営する。2009年より、デジタルハリウッド大学大学院事務局長を経て、現在は専任教授として学生の指導にあたる。 本大学院においては、「デジタル技術を活用して新しい教育を創る」ことを目的とする「エフェクティブ・ラーニング・ラボ」(佐藤昌宏研究室)を主宰。テクノロジーにより教育にイノベーションを起こすムーブメント、「EdTech」分野のフロントランナー。EdTechスタートアップの想いを発信するイベント EdTech JAPAN Pitch Festival や大企業によるEdTech支援プログラムEdTechCampのプロデュースなど、教育×ICTの先端動向を広く発信している。また、ドコモ・イノベーションビレッジ、スタートアップウィークエンド、Viling Venture Partners等、数多くのインキュベーションプログラムのメンターや審査員なども務めている。



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